成年後見申立とは?申立手続について解説

事故で高次脳機能障害等の重大な後遺障害を負った場合、被害者として後遺障害等級認定や、相手方に対する賠償金請求等の大切な行動を取ることができなくなります。
このように、被害者自身が適切な判断能力を失ってしまった時のために、親族が成年後見人となり本人に代わって諸手続きを進めることができる制度があります。
ここでは、成年後見制度の基本的知識と申立の流れについて解説します。
本人が回復するか死亡するまで必要とされる成年後見人の存在とは
重度の高次脳機能障害等を負った場合、日常生活に支障が出るほどの判断力や行動力の低下が症状として現れます。
このような場合、家族が所定の手続きを行って成年後見人となることで、適切な判断や行動ができない本人の利益を守り保護することとなります。
後見人として選任された場合、損害保険料率算出機構や保険会社に対する手続きおよび交渉のみならず、今後被害者本人の状態が回復するか死亡に至るまで、その役目を負い続けることとなります。
成年後見人を必要とする重大な後遺障害の例
以下のような重大な後遺障害を負った場合、適切な判断力や自発的な行動力が著しく低下してしまうため、成年後見人が本人に代わって、事故対応及び日常生活における本人代理としての役割を務める必要性が出てくる可能性があります。
遷延性意識障害
植物状態と呼ばれるもので、自発的に移動することができない・自発的な摂食ができない・排泄コントロールができない・目で存在を認識することができない・簡単な命令を除く意思疎通ができない・発語ができない、といった症状が3ヶ月以上に渡って続いているものを指します。
高次脳機能障害
事故による脳外傷が原因となり、次に挙げる5つの特徴的な機能低下が確認されます。
社会的行動障害
著しい意欲の低下や自発的な行動の減少が見られ、ベッドに寝たきりのまま過ごすことが圧倒的に多くなります。
感情コントロールの困難
感情をコントロールできず、周囲の言葉や状況に対して過敏になり、攻撃的な発言や行為が目立つようになります。暴力や大声での暴言等、興奮状態に陥ると自身を抑えることができません。
適切な対人関係を維持できない
状況に応じた適切な会話や意思疎通ができず、相手の発言を繰り返したり、急に話題を変えたり、会話における程良い距離感を保つことが困難となります。
依存的行動
大人として自立した思考や行動が著しく制限され、誰かに頼ったり甘えたりする退行の様子が見られます。他者に対する依存性が見られるようになります。
従前の記憶に基づく固執
自分の持つ記憶に基づいたやり方に固執し、新しい方法を拒絶します。
脊髄損傷
事故で脊髄に強い衝撃を受けたために、運動や感覚の機能が損なわれます。脊髄損傷のうち、生命維持に関わる体温維持機能や代謝機能を失うものを完全損傷と呼び、麻痺等が残り四肢に障害が残るものを不完全損傷と呼びます。
完全損傷の場合は、生きる上での重要な機能に障害を受けているため、介護状態になることが多くあります。
上記いずれの症状も、事故対応だけではなく生きる上での重大な障害が現れ、周囲との適切な人間関係の維持が難しくなるため、非常に深刻な状態であると言えます。
成年後見人になるための申立手続の流れ
被害者が自発的かつ適切な思考や行動ができなくなった場合、その家族は家庭裁判所に対して、成年後見人となることを申し立てます。
被害者本人の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出すると、裁判所はよく調査を行った上で成年後見人を選任することになります。
裁判所に提出するのは、所定の申立書・申立事情説明書・被害者本人の戸籍謄本と住民票・被害者本人の財産目録と収支状況報告書・登記されていないことの証明書といった書類になり、これに収入印紙と切手を添えて用意します。
必要書類が揃ったら家庭裁判所に申し立てを行い、以下の流れにより最終的に成年後見人が決定されることになります。
家庭裁判所に申し立てを行う
被害者本人の住民票がある地域を管轄する家庭裁判所に、必要書類を揃えて成年後見人の申し立てを行います。
調査や審問が行われる
今後、被害者本人に代わってあらゆる活動を行うことになる人物について調査します。被害者本人や成年後見人候補者との面接を行い、必要に応じて親族から候補者の情報をヒアリングし、信用に足る人物かを測ります。
場合によって裁判官自ら審問を行いますので、選任までの過程は非常に慎重に行われると言えます。
審判
十分な調査に基づいて、家庭裁判所は成年後見人選任の審判を下します。
これに対し不服がない場合は、審判からおよそ2週間後に成年後見人として確定し、その責務が開始されることとなります。
※上記はあくまで一例であり、状況に応じて多少異なる場合があります。
重大事故にあったら弁護士に依頼すべき理由
重大な障害を負ったことで、本人だけではなく家族には悲痛な思いや過大な負担がかかることになります。
当事務所では、高次脳機能障害等の重大事故に関する経験を生かして、依頼者の思いや要望を受け止め、その気持ちを結果に反映させることが責務だと考えています。
特に大変な状況の中では、成年後見人という存在への理解や、申立書類の準備は依頼者にとって大きなプレッシャーとなり、また多大な労力と負担に繋がるため、親身にお話を伺ってしっかりとサポートを行います。
ぜひ、お電話もしくはご来所によるご相談をお待ちしております。